過去の展覧会

ストラスブール美術館展

展覧会概要主な出品作品ストラスブール美術館関連イベント刊行物

展覧会構成
象徴主義
印象主義からフォーヴィスムへ
キュビスムとエコール・ド・パリ
両大戦間期の写実主義
抽象からシュルレアリスムへ
1960年代以降、コンテンポラリー・アート

出品作品
象徴主義

19世紀後半の文学や美術では、自然主義や歴史画などを重んじるアカデミーに反発し、対象を忠実に描くのではなく、人間の内面など言葉で言い表せないものを描こうとした象徴主義が起こります。この動きはヨーロッパ全体に広がり、様々な表現を生み出しました。イギリスで起こったロセッティ等のラファエル前派はその先駆けとして知られています。
フランスでは、ゴーギャンや、ナビ派の画家たち(ドニなど)、また本展には出品されていませんが、モローやルドンなどが象徴主義を代表する作家です。



ダンテ・ガブリエル・ロセッティ
《解放の剣にキスをするジャンヌ・ダルク》
1863年 油彩・カンヴァス
61.2×53.2cm

ポール・ゴーギャン
《ドラクロワのエスキースのある静物》
1887年頃 油彩・カンヴァス
40×30cm


モーリス・ドニ
《室内の光》
1914年頃 油彩・カンヴァス
98×125cm

印象主義からフォーヴィスムへ

1874年に開かれた無審査の展覧会に参加したモネ、シスレー、ピサロ、ルノワール等、後に「印象派」と呼ばれる画家たちは、単に対象を写すのではなく、目の前にある物の移ろいゆく様を表現しようとしました。彼らは、当時の光学研究に基づいて、輪郭を弱め混色を避けたやさしい色調を用いました。その後、この印象派の革新はさらにもう一歩推し進められ、まずスーラ、シニャックらによって点描による筆触分割技法が生み出されます。また、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌや、さらに彼らから影響を受けた、奔放な色彩による表現で「フォービスム(野獣派)」と呼ばれた画家たちは、より自由な画面構成と色彩を用い、20世紀の抽象表現に道筋をつけました。



アルフレッド・シスレー
《家のある風景》
1873年 油彩・カンヴァス
45.7×61.2cm

ポール・シニャック
《アンティーブ、夕暮れ》
1914年 油彩・カンヴァス
73×92cm


ピエール・ボナール
《テーブルの上の果物鉢》
1934年頃 油彩・カンヴァス
41×65.5cm

アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
《マルセル・ランデール嬢の胸像》
1895年 8色リトグラフ・紙
58.5×42cm

キュビスムとエコール・ド・パリ

1907年、セザンヌの影響を受けて、ピカソとブラックは対象を一度解体し、様々な視点から再構成するキュビスムを始めました。画面からは遠近感や質感がなくなり、記号化されたように見えますが、1912年頃からピカソやグリス等により、様々なオブジェを寄せ集めて作るアサンブラージュや新聞などの異質なものを張り付けるコラージュの技法を用いて、現実の物のリアルな質感が絵画空間の中に持ち込まれました。また、この当時のパリには世界各地から多くの芸術家が集っていました。特にモンマルトルやモンパルナスに住み、キュビスムやフォービスム等の特定の運動に参加せずに活動した画家たちのことを「エコール・ド・パリ(パリ派)」と呼び、シャガール、ローランサンなどが代表的な画家です。



フアン・グリス
《静物》
1922年 グワシュ・ステンシル・紙
25×32.8cm

両大戦間期の写実主義

第一次大戦後、フランスでは以前のようなアヴァンギャルドな動きは影をひそめ、古典回帰の風潮が見られるようになり、あのピカソやレジェでさえも具象の作品を描くようになります。ドイツでは、敗戦への絶望感と、ヒューマニズムを抑圧した国家主義への批判から表現主義が展開され、その後より社会批判的な性格を強めた新即物主義が生まれました。



ギュスターヴ・ストスコプフ
《オーベルゼーバッハの衣装を着たマルタン・ズィリオックス》
1943年 油彩・板
80×59cm

リザ・クリューゲル
《サボテンのある静物》
1927年 油彩・カンヴァス
65×54cm


フェリックス・ヴァロットン
《水辺で眠る裸婦》
1921年 油彩・カンヴァス
122.5×192.5cm

抽象からシュルレアリスムへ

印象派に始まった絵画の新しい流れは変化を続け、1910年代には形や色彩をさらに単純化した抽象絵画を生み出し、カンディンスキーは直線や平面を基本とした幾何学的な画面を描きました。また、第一次大戦後の虚無感を背景に、伝統的な価値観や秩序にとらわれない「ダダイスム」がジャン・アルプらにより開始され、ヨーロッパに広がっていきます。このダダイスムと、フロイトによって創始された精神分析学とをベースとして、人間の無意識の世界に挑戦したのが1924年に始まったシュルレアリスムでした。彼らは、現実を超えた世界を表すために、「オートマティスム(自動記述)」「フロッタージュ(こすり出し)」などの技法を用い、絵画表現の新しい可能性を切り開きました。



ヴァシリー・カンディンスキー
《コンポジション》
1924年 グワシュ・紙
22×18cm

1960年代以降、コンテンポラリー・アート

1960年以降の芸術は、写真、映像、空間全体を作品化するインスタレーション、身体を使ったパフォーマンスなど、その表現方法は多様化しています。一方で絵画に取り組む画家たちも、抽象・具象の枠にとらわれずに新しい表現を模索し、絵画の限界に挑戦し続けています。社会や芸術そのものへの問いかけが込められたこれら現代の作品からは表現の無限の可能性を読み取ることができるのではないでしょうか。



ジャン=ミシェル・サネジューアン
《空間ー絵画》
1978年 アクリル・ビニール・カンヴァス
80×115.7cm

エド・パシュキ
《商業主義的》
1990年 油彩・カンヴァス
107×122.5cm


ジェラール・ガジョロフスキー
《宿命或いは家族の絆、もうひとりのマルゴ》
1972年 アクリル・カンヴァス
80×80.5cm