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「不思議の国のアリス展」作品紹介⑤ 山本容子《hop,step,hop,step》

2020/03/28

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山本容子《Hop, Step, Hop, Step》 2007年 油彩/キャンバス オフィス・ルカス ©YOKO YAMAMOTO

 

色鮮やかな赤いベストを身に着け、懐中時計を気にしながらリズミカルな足取りで駆け抜けていくシロウサギ。

物語冒頭でアリスが不思議の国に迷い込むきっかけとなったシロウサギを、日常の時空から離れて異次元へと誘う存在と捉えてモチーフにした作品です。

 

作者の山本容子は、1994年に出版された『アリス・イン・ワンダーランド』で挿絵を担当して以来、アリスの物語に着想を得た創作活動をライフワークの一つに位置付けています。

彼女は「出会うものすべてが自分と対等で、動物や植物そして自然現象とも話のできる、少女の頃特有の状態は、確かに私も経験したと思う」*と語り、夢と現実が交錯する不思議な物語を、空想に耽った自らの少女時代と重ね合わせ、創作意欲を大いに刺激されるのだといいます。

 

誕生から150年以上の時を経た今もなお、色褪せることのない『不思議の国のアリス』。

これからも多くの表現者たちの手で新たなアリス像が生み出され、私たちを魅了し続けるでしょう。

 

 

*山本容子「円座」『山本容子の姫君たち himegimi@heian』講談社、2009年

 

 

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「不思議の国のアリス展」作品紹介④ エリック・カール《チェシャネコいもむし》

2020/03/26

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エリック・カール《チェシャネコいもむし》 2018年 薄紙、アクリル、コラージュ エリック・カール

"Cheshire CAT-erpillar" created by Eric Carle, 2018.

Image reproduced with permission from the Eric Carle Studio.

 

裂けんばかりの口から歯を覗かせ、茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべるチェシャネコ。

『不思議の国のアリス』で、アリスの前に突然現れて助言をしたり、騒動を巻き起こしては姿をくらますミステリアスなキャラクターです。

しかしここに描かれているのは、ただのチェシャネコではありません。頭から突き出た触角や、くねくねとした体はまさにイモムシそのものです。

 

この作品は、アメリカ在住の絵本作家エリック・カールが本展のために特別に描き下ろしたもの。

彼は時間を見つけては半透明の薄紙に絵の具を塗り、引っ掻いたりスポンジ等を押し当てたりして多彩な質感をもった素材を作り、アトリエにストックしています。

今回制作された作品は、その色とりどりの薄紙の中から、これまで数多く描かれてきたアリスの挿絵を参考に色彩を選び、コラージュすることで生まれた一点なのです。

エリック・カールの代表作『はらぺこあおむし』とアリスの世界観が融合したこの作品には、彼の先達へのオマージュが込められています。

 

 

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「不思議の国のアリス展」作品紹介③ アーサー・ラッカム《ニセウミガメ》

2020/03/25

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アーサー・ラッカム《ニセウミガメ》 1907年

ペン、インク、水彩/紙 コーシャク・コレクション  ©The Korshak Collection

 

ルイス・キャロルとマクミラン社との間で取り決められた『不思議の国のアリス』の版権が切れた1907年以降、様々な画家が独自の解釈でアリスの挿絵を描いてきました。

その先駆けとなったのが、アーサー・ラッカムです。

彼は『グリム童話』や『ガリバー旅行記』といった名作のイラストも数多く手掛け、20世紀初頭の英国を代表する挿絵画家の一人として、今日高く評価されています。

 

ラッカムはペンを用いたしなやかな線で、不思議の国の住人から背景の草木までを緻密に描き、褐色の穏やかな彩色で物語に新風を吹き込みました。

しかしそれは、多くの後世の画家たちがそうであったように、初刊本で著者キャロルと共に揺るぎないアリス像を築き上げた挿絵画家ジョン・テニエルへの挑戦でもありました。

ところがラッカムが描いた新たなアリス像は、テニエルのそれが脳裏に深く刻み込まれていた当時の人々には容易に受け入れられませんでした。

その現実に苦しんだ彼は、後年出版社から続編『鏡の国のアリス』の挿絵依頼を受けましたが、頑なに拒み続けたといいます。

 

 

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「不思議の国のアリス展」作品紹介② ジョン・テニエル『鏡の国のアリス』挿絵のための下絵《握手してつかわそうではないか!》

2020/03/21

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ジョン・テニエル『鏡の国のアリス』挿絵のための下絵《握手してつかわそうではないか!》

1870-1871年 鉛筆/紙 ローゼンバック博物館・図書館

John Tenniel, "You may shake hands!". The Rosenbach, Philadelphia


「絶対、まちがいないわ!まるで顔中に『ハンプティ・ダンプティ』って名前が書いてあるくらい、確かだわ!」

―ルイス・キャロルが著した『鏡の国のアリス』で、彼の存在に気付いた主人公アリスは思わず心の中でこう叫びました。

これは鏡の国に迷い込んだアリスが逃げる卵を追いかけていくと、その卵は高い塀の上で正体を現し、劇的な出会いを果たしたシーンです。

 

初版本の挿絵下絵として描かれたこの作品は、そんな印象深い場面を可視化するとともに、好奇心旺盛なアリスと居丈高なハンプティという全く異なるキャラクターの両者の間に漂う一種の緊張感をも巧みに描き出しています。

画面に残る幾重もの描線からは、作者ジョン・テニエルの推考の跡が垣間見られます。

 

当時、風刺漫画家として英国で高い人気を誇ったテニエルは、著者キャロルの依頼を受けて『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』の挿絵に取り組みました。

二人は互いに意見を交わしながら物語の世界観を構築していったのですが、テニエルの挿絵なくしてアリスの物語は名作たりえなかったと言えるでしょう。

 

 

 

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「不思議の国のアリス展」作品紹介① ルイス・キャロル/画:ジョン・テニエル《切手ケース》

2020/03/20

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ルイス・キャロル/画:ジョン・テニエル《切手ケース》 1890年 ローゼンバック博物館・図書館

Lewis Carroll, The Wonderland postage stamp case. The Rosenbach, Philadelphia

 

子守をするかのような仕草で子ブタを抱きかかえる一人の少女―その名はアリス。

彼女こそが、ルイス・キャロルの名作『不思議の国のアリス』の主人公です。

物語は白ウサギの後を追って巣穴に落ちたアリスが、地下の国で様々な人や動物たちと出会い、奇想天外な冒険を繰り広げていくのですが、ジョン・テニエルによって描かれた挿絵は、キャロルが紡いだファンタスティックな世界観を見事に表現しています。

 

この作品はキャロル自身のプロデュースで商品化された切手ケースに描かれたもので、アリスが公爵夫人の家で預かった赤ん坊を戸外に連れ出すと、子ブタに変わって森の中へ逃げて行くという物語のワンシーンを初刊本の挿絵から選んでいます。

アリスの小さくきっと結んだ口元や、正面を真っ直ぐに見つめる大きな瞳は、今もなお観る者を虜にしてしまいます。

それは彼女の表情があどけなく愛らしいだけでなく、予期せぬ困難に遭遇しても決して挫けることのない芯の強さを秘めているからでしょう。

 

 

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「不思議の国のアリス展」来場1万人を達成!

2020/02/20

本日2月20日(木)に、「不思議の国のアリス展」の来場者が1万人を達成しました!

 

1万人目のお客様は、静岡県内からお越しの青木さんと、鈴木さん。

昔からアリスが大好きというお二人。

青木さんは本展の鑑賞は2回目とのことで、今日はご友人の鈴木さんと一緒に

「リアル脱出ゲーム」も楽しみたいとお話しいただきました。

 

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お二人には、当館副館長と静岡新聞社・静岡放送 地域ビジネス推進局 専任局長 原尚弘様から、アリス展の図録と記念品を贈呈しました。

またのご来館をお待ちしています!

 

 

不思議の国のアリス展」は、3月29日(日)までの開催です。

謎解き体験型ゲーム・イベント「リアル脱出ゲーム」や、

東大発の知識集団「QuizKnock」とコラボした音声ガイドなど、お楽しみ企画も盛りだくさん!

会期後半は混雑が予想されますので、お早目のご来館がおすすめです♪

 

 

(m.o)

 

 

不思議の国のアリス展
会期:2020年2月1日(土)~3月29日(日)
観覧料:一般1,300(1,100)円、大高生・70歳以上900(700)円、中学生以下無料
*( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金
*障がい者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料