Shizubi Project 6 彼方へ ① 國府理

2017/04/30

3月28日から、美術館エントランスホール・多目的室で「Shizubi project 6 彼方へ 國府理・林勇気・宮永亮」(6/18まで)が始まっています。遅ればせながら、展示風景をシリーズでご紹介します。

 

「私が乗り物を作りたかったのは、それを手に入れれば、どこかへ行けると思ったから」

國府理さんの《プロペラ自転車》1994年と、《Sailing Bike》2005年は、そう語った作家の初期の代表作です。天井が高く、白を基調としたエントランスの壁と窓辺に、美しく、静かに佇んでいます。

独自の設計思想と、職人的な技術を持った作家の手から生まれた作品は、フレームの隅々まで研ぎ澄まされた感覚と仕上げへの拘りが行き渡り、今にも走り出しそうです。

 

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(写真)撮影:木奥恵三

 

1970年生まれの國府理さんは、2014年、青森県での個展開催中に不慮の事故で亡くなりました。享年44。昨日4月29日はそのご命日でした。多くの人が驚き、悲しんだその突然の死から3年、作品は変わらず私たちの想像力に力を与えてくれます。

会場では、若き日の國府さんが仲間と帆を張った自動車《Natural Powered Vehicle》2004年で旅するドキュメンタリー映像も流れています。こちらはYouTubeでもご覧いただけますので、是非どうぞ。https://www.youtube.com/watch?v=Y6KmV6TGpcE

 

 

展示は6月18日(日)まで。6月4日(日)からは、エントランスホール・多目的室に加えて、林勇気さん、宮永亮さんの映像作品で展示室にも拡張します。

 

また、展示室では、「アルバレス・ブラボ写真展 メキシコ、静かなる光と時」(5月28日(日)まで)を開催中。100年を生きた20世紀を代表する写真家の日本では初めての大規模な回顧展、モノクロームの美しいプリントが多数並んでいます。是非、合わせてご覧ください。

 

(a.ik)

 

 

アルバレス・ブラボ写真展 作品紹介(1)《夢想》1931年

2017/04/29

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頬に手を添え、物憂げな表情を浮かべる少女は、何を考え、何処を見ているのでしょうか。
彼女が心に想い描く景色は伺い知れず、手前の柵は私たちと少女を隔てる境界線のようです。
右肩に降り注ぐ一点の光もまた、少女だけに与えられた特別な啓示かと思わせます。


柵が織りなす線のリズムや、少女の足が丁度隙間に見える構図など、
アルバレス・ブラボの技量の高さは言うまでもありません。
しかし一番の魅力は、何気ない写真のなかに暗示されている、
一方には見えて、もう一方には見えない世界の存在ではないでしょうか。

少女だけが見つめる景色。メキシコの喧騒の裏に潜むもう一つのメキシコの姿。
光と影で捉えたアルバレス・ブラボのモノクロ写真には、世界の二元性が静かに開示されています。

(a.i)


メキシコの「光」と「影」

2017/04/02

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メキシコを代表する写真家マヌエル・アルバレス・ブラボ。

100歳まで生き、まさにひとつの時代を眺めてきた作家ですが、

その眼差しは常に自国メキシコの文化と生活に向けられていました。

 

アルバレス・ブラボが本格的に写真を撮り始めたのは1920年代末。

メキシコ革命の動乱がひと段落し、芸術の分野では

壁画運動の3巨匠オロスコ、リベラ、シケイロスが活躍をみせた頃でした。

彼らは古代メキシコの 栄光や革命の歴史、また新生メキシコの建国精神などを、

公共建築物の巨大な壁面に力強いイメージで描きました。

 

また1937年には革命家トロツキーが、

翌年にはシュルレアリスムの主導者アンドレ・ブルトンがメキシコを訪れ、

当時のメキシコは、最も国際的な文化交流の場となっていました。

しかしこの活気に満ちた時代のなかにあっても、

アルバレス・ブラボが撮るモノクロの写真世界には、静かで詩的な世界が広がっています。

 

この時期の代表作のひとつ《夢想》では、少女が頬に手を添え、物憂げな表情を浮かべています。

少女は何を考え、何処を見ているのでしょうか。

境界線のような柵の手前にいる私たちには、彼女の心の世界を見ることはできないのかもしれません。

 

また、街角の眼鏡屋の看板を写した《眼の寓話》は、よく見ると裏焼きで、文字が逆さまになっています。

これらの作品には「こちら」と「あちら」、「表」と「裏」といった2つの要素が同居しています。

 

メキシコの人々の思想の根幹には、先スペイン期から継承した「二元性」の概念があると言われています。

これは、世界に存在するあらゆるものは2種類の要素で成り立ち、

それらは対立するのでなく補完しあう関係である、という考えです。

毎年11月に行われる「死者の日」のお祭りは、

生と死も円環を成す存在であるというメキシコの死生観を最もよく表していると言えるでしょう。

 

アルバレス・ブラボの作品は、私たちが思い描く鮮やかな色に彩られたメキシコのイメージとは異なりますが、

そこには深くメキシコの精神が息づいています。

彼の作品に潜む、この複雑で多層的な意味を読み解いていくと、

写真もまた「光」と「影」の芸術であったということを思い起こすのです。

 

(a.i.)

 

 

IMG_9947-tyousei.jpgのサムネイル画像

 

展覧会チラシには《夢想》を、しおりサイズのミニチラシには《眼の寓話》を使用しています。

ぜひお手に取ってご覧ください。

 

「アルバレス・ブラボ写真展―メキシコ、静かなる光と時」

会期:2019年4月8日(土)~5月28日(日)

観覧料:一般1000(800)円、大高生・70歳以上800(600)円、中学生以下無料

*( )内は前売りおよび当日に限り20名以上の団体料金

*障害者手帳等をお持ちの方及び介助者原則1名は無料

 

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