清親展 3月1日までの展示作品から

2015/02/22

小林清親展では会期中3回ほど展示替えを行います。2月22日(日)で展示が終了する作品については先日ご紹介したとおりですが(http://www.shizubi.jp/blog/100-1/)、その一週間後、3月1日(日)と3日(火)の間の展示替えでは84点もの作品が入れ替わります。

3月1日(日)までの展示作品のうち、ぜひご紹介したいもののひとつに《日本橋夜》があります。

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《日本橋夜》 明治14年
静岡県立美術館

ガス灯に照らされた夜の日本橋を描いた作品です。清親の作品にはしばしばガス灯が登場しますが、この《日本橋夜》では、ガラスのフードの中の炎や、星のようにきらめく遠方の明かり、そして、人工の光に照らされてできた影までもが描き込まれています。明治の夜景の美がとらえられた名作です。

この作品はいくつかの摺りの異なるものが知られています。天から下に向かって色が明るくなる一文字ぼかしで夜空を表したものが多い中、静岡県立美術館所蔵のものは雲のように複雑なぼかしがほどこされており、特に美しい1枚です。この、静岡県立美術館所蔵の《日本橋夜》は3月1日(日)まで、静岡会場のみの出品となります。

もう1点、前期展示のものからご紹介したいのが《猫と提灯》です。

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《猫と提灯》 明治10年頃
千葉市美術館

猫の毛並みや提灯の凹凸など細かいところまで描写が行き届いた、非常に手の込んだ作品です。点線で表された猫のひげや、何度も摺り重ねて表された背景の深い緑色などは、実物で是非ご確認いただきたいところです。猫の首輪の赤も、摺りを重ねて立体感が出されています。19面の版木を用い、落款も含め35回の摺りを重ねて制作されたという素晴らしい木版の技を、ぜひご覧ください。

この作品は《猫と提灯》という題名ですが、画中にはもう一つ、重要なモチーフが描かれています。猫が追いかけているその生き物は...提灯の中に隠れています。清親の遊び心が感じられますね。


一方、3月3日(火)から登場する名作もあります。

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《東京銀座街日報社》
明治9年  千葉市美術館

本展のポスターやチラシに使用した《東京銀座街日報社》がいよいよ後期から展示されます。本作品には、煉瓦や石造りの西洋風の建物が建ち並ぶ新しい銀座の街が描かれています。「東京日日新聞」の看板を掲げた新聞社が見え、人力車や馬車が行き交う光景は文明開化の時代を感じさせます。人物や建物には、薄墨色の摺りを重ねた陰影がつけられており、どことなく西洋風の印象を与える効果を上げています。澄み切った水色の空と、人力車の赤ケットの対比が鮮やかな作品です。


肉筆画も多くの作品が入れ替わります。
武者絵の傑作《川中島合戦図屏風》や晩年に長野県の松本で描いた《待乳山遠望竹屋の渡図》は3月1日(日)までの展示です。替わって後期、3月3日(火)からは、ライオンを描いた《獅子図》や初公開の武者絵《那須与一 扇の的 平景清 錣引き》が展示されます。

すべての作品を一度にお見せできず心苦しいですが、前期と後期、どちらをご覧いただいても満足度が変わらないよう心がけて振り分けました。お目当ての作品のほかにも、思わぬよい出会いがあるかもしれません。ぜひご観覧ください。


(y.k.)

没後100年 小林清親展 文明開化の光と影をみつめて

3月22日(日)まで 10:00~19:00 月曜休館

展覧会情報はこちら http://shizubi.jp/exhibition/future_150207.php

作品リストはこちら(展示期間も入っています) http://www.shizubi.jp/img/exhibition/kiyochika_list.pdf

2月15日、カタログ刊行記念・トークセッション「ヒトのカタチ、彫刻」開催!

2015/02/12

昨年末からエントランスホールで開催中のShizubi Project 4「ヒトのカタチ、彫刻」(3/22日まで)、皆さんもうご覧いただきましたか?エントランスには、樹脂や陶、漆を素材に、それぞれの"ヒトのカタチ"を展開する3人の作品がならんでいます。

さて、その関連事業として今週末の日曜日に、カタログ刊行記念・トークセッションを実施します。
3人の出品作家に加え、公式カタログにテキストを執筆いただいた気鋭のお二人の識者を交え、ヒトのカタチと彫刻にまつわる様々なお話をお聞きする予定です。
参加無料、申し込み不要ですので、是非、この機会にご参加ください。

●Shizubi Project 4「ヒトのカタチ、彫刻  津田亜紀子/藤原彩人/青木千絵」
カタログ刊行記念 トークセッション「ヒトのカタチ、彫刻」

日時:2月15日(日)14:00~16:30(開場13:30)
会場:静岡市美術館多目的室  参加無料 申込不要

【進行:静岡市美術館学芸員 伊藤鮎】
14:00
 以倉新(静岡市美術館学芸課長)「ヒトのカタチと『彫刻』」(15分)
 金井直(信州大学人文学部准教授)「チョウコク あるいは、弱い触角」(15分)
 阿久津裕彦(美術解剖学)「人体と人体彫刻」(15分)

14:50~15:00(10分) 休憩
 津田亜紀子(10分) 自作紹介
 藤原彩人(10分) 自作紹介
 青木千絵(10分) 自作紹介

 ディスカッション・質疑応答(60分)
16:30 終了



美術館のエントランスホールを使って、毎年1回、現代の美術を紹介してきたシズビプロジェクトも4回目を迎えました。
これまでは1人の作家のワンマンショーだったが、今回初めて3人の作家を紹介しています。
ギリシャ、ローマの昔から、もともと西洋では「彫刻」とはまずは人の形のことであり、その意味で人体彫刻は「彫刻」の王道なのですが、タイトルで「ヒトのカタチ」と「彫刻」を「=」ではなく「、」でつないだところに、今回のプロジェクトのささやかな意味を込めています。

というのも、20世紀初めの「抽象彫刻」の出現とアヴァンギャルド(前衛運動)の進展以降、「オブジェ」や「立体」など、およそ「彫刻」らしからぬものが登場して久しい今日この頃、そんな現代において、何の疑問もなく人体像を「彫刻」として作り続けることはできないだろう、という問題意識なのです。

もちろん、今回の3人だけで現代の多様な「彫刻」の状況を概観できるものではありませんが、年齢も素材も違う今回の3人の作品は、現代において人の形を「彫刻」として作ることの意味を考えさせてくれます。

津田亜紀子(1969‐)さんの、レース生地や、植物が生い茂る厚手の生地を樹脂で固めた軽やかな女性や子どもの姿。
藤原彩人(1975‐)さんの、陶による矮性の小人か、宇宙人のような虚ろな表情の立像。そして青木千絵(1981‐)さんの、漆の漆黒の闇に包まれたリアルな下半身に、ぼってりとした不定形の塊がついた頭のない人の姿。
三者三様のヒトのカタチに、現代に生きる「私」とは何かを考えさせられます。


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津田亜紀子 椅子に座る06 2006年 樹脂、布




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藤原彩人 首像/意識の壺 2014年 施釉陶



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青木千絵 BODY10-1 2010年 漆、麻布、スタイロフォーム




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撮影:神藤 剛




(a.i) 


2月22日までの展示作品から

2015/02/11

木版画や日本画は光に弱い材質でできているため、長期間展示することができません。
そのため、このたびの清親展でも何回か展示替えを行います。

前期[3月1日(日)まで]と後期[3月3日(火)から]の入れ替えで最も多くの作品が入れ替わりますが、一足早く、2月22日(日)までの2週間で展示が終了する作品も21点ほどあります。

木版画では、清親の最も早い時期の作品の一つ《東京五大橋之一 両国真景》や、月明かりと水面の反映が印象的な《今戸橋茶亭の月夜》など19点が22日までの展示となっています。

 

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《東京五大橋之一 両国真景》

明治9(1876)年

山口県立萩美術館・浦上記念館

 

 

 

 

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《今戸橋茶亭の月夜》

明治10(1935)年頃

山口県立萩美術館・浦上記念館

 

 


《橋場の夕暮れ》は空の色が違う摺りのものがいくつか知られていますが、空が青くて雲がほんのり赤みを帯びる神奈川県立歴史博物館所蔵のものは22日までの展示です。空が灰色で雲が一面ピンク色に染まる個人蔵(練馬区立美術館寄託)のものは、こちらの作品と入れ替わりで、2月24日から3月8日まで展示します。

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《橋場の夕暮れ》明治13(1880)年
(左)神奈川県立歴史博物館 (右)個人蔵(練馬区立美術館寄託)

 

また肉筆画では、《四季幽霊図》(福岡市博物館)と《初午詣》(個人蔵)の2作品が22日で展示終了となります。《四季幽霊図》は四幅対の力作です。幽霊と言えば夏のものと決まっていそうなものですが、清親は趣向を凝らして四季折々の幽霊図を考え出しました。恐ろしいというよりは、哀愁漂う幽霊たちです。ぜひ会場に会いに来てください。

 

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 一方の《初午詣》も興味深い作品です。というのも、印章から、清親の還暦記念千画会で描かれたものと分かるからです。還暦記念千画会というのは、清親の還暦を祝う会であるにもかかわらず、祝われる当人の清親が1日で千枚の絵を描かされるという催しだったそうです。清親の五女・哥津の回想によると、会場に着いた清親は十干十二支の順に合わせて1点20秒足らずで次々と筆を振るい、夕方までには予定の1000枚を描き上げ、さらには超過の分まで描き続けて夜にはご機嫌で帰ったとか(小林哥津『清親考』素面の会、1975年)

 

60歳のことを還暦というのは、十干と十二支を組み合わせてできる「甲子」「乙丑」「丙寅」のような干支(えと)が60種類すべて経過して、初めの甲子に戻ることからそう呼ばれます。還暦の画会で十干十二支の画題とは洒落た趣向ですね。

 

この《初午詣》には「甲午寓意」と記述があります。「甲午」は31番目の干支ですから、描き始めてから31枚目か、あるいはさらに60種類を一周したのちの91枚目か、はたまた151枚目か...。何しろ1日で1000枚ですから、甲午(きのえうま)の画題だけでも16枚は描いたはずです。還暦を迎えた清親の元気さが伝わってくる作品です。

 

開幕から2週間で展示替えとなる作品の一部をご紹介しました。どうぞお見逃しなきよう。

(y.k.)

 

 

 《初午詣》 明治41(1908)年 個人蔵

 

 

 

没後100年 小林清親展 文明開化の光と影をみつめて

3月22日(日)まで 10:00~19:00 月曜休館

展覧会情報はこちら http://shizubi.jp/exhibition/future_150207.php

作品リストはこちら(展示期間も入っています) http://www.shizubi.jp/img/exhibition/kiyochika_list.pdf