「わた死としてのキノコ」 9/1記念対談&ライブ!

2013/08/27

天井の高い美術館のエントランスホールの空間全体に、菌糸がはびこり、まん中にはぽっかりと巨大なキノコが浮かんでいる― 

現代のさまざまな美術を紹介するシズビプロジェクト、8月6日から始まりました。

3回目の今年は、「軽やかな彫刻」で知られる美術家・今村源(いまむら はじめ/1957~)さんです。

 

 

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見上げると、2,3mはありそうな傘の裏側には、薄緑色の襞がびっしり、近くの柱に取り付けられた「滑り台」の階段を登ると、オレンジ色に輝く傘の上部が見下ろせます。

ちなみに、「滑り台」の滑る部分は、反対側の柱から伸びていて、あれれ、どうなってるの?! 

ほかにも、カフェの椅子が菌糸に絡めとられて、逆さまに浮かんで回転していたり、まっ白な男の裸体像がきゅっとひしゃげて逆立ちし、昔懐かしい冷蔵庫の中にはシダが茂っていたり・・

 

 

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キノコは普段、菌糸として森の地下にひっそりと広がっています。

落ち葉や生き物の死骸を分解し森の生態系を支えている菌類。

私たちの目には見えないところで、しかし確実に存在し世界を支えているキノコは、そんな菌類が胞子を飛ばし子孫を残すために、つかの間、地上に顕れた姿です。

私たち人間も、そんな命の流れを考えるとき、個としての私など流れのなかのほんの一瞬の姿に過ぎない。

日々悩んでいる「わたし」もやがて大いなる命の流れの中に戻っていく― キノコの姿に今村さんの思索は、広がります。

 

 

実はこのキノコ、巨大なラッパになっていて音も出るとか・・ 今週日曜日、9月1日には、記念対談&ライブも開催します。

第1部の対談は、今村さんご本人と、今村さんの作品をその最初期からずっと見てきた建畠晢先生(美術評論家/現京都市立芸大学長)に、今村さんが出発した80年代の美術状況も踏まえて、"軽やかな彫刻"についてお話を伺う予定です。
第2部では、ピアノとサックスによる現代音楽ユニット「.es(ドットエス)」のおふたりを関西からお招きして、実際に巨大な「キノコ」を演奏して頂きます。

一体、キノコはどんな音が出るのでしょうか?
どちらも、参加無料、申込み不要ですので、是非、お出かけください。

 

●記念対談&ライブ
日時:2013年9月1日(日) 
 第一部 記念対談 14:00~15:30(開場 13:30)
     対談者  ∥  今村源 [美術家]
     建畠晢 [京都市立芸術大学 学長]
     司 会 ∥ 以倉新 [静岡市美術館 学芸課長]
     会 場 ∥ 静岡市美術館 多目的室

  第二部 記念ライブ 16:00~17:00
      出 演 ∥ .es  (ドットエス)
           橋本孝之(サックス、ギター、ハーモニカ、改造尺八等)と
           sara(ピアノ、パーカッション、ダンス他)の二人の即興演
           奏家によるコンテンポラリー・ミュージック・ユニット。                     

参 加 料 : 無料
対  象 : どなたでも50名
申  込 : 不要 当日直接会場へお越し下さい


9月21日(土)には、今村さんと菌類学者の小川眞先生との対談も予定しています。

昨年出版された岩波新書『キノコの教え』の著者で、80歳にならんとする気骨ある、しかし飾らない小川先生のお話は面白く、こちらもお勧めです。お楽しみに。

作品集刊行記念対談「キノコの教え」 9月21日(土) 14:00~16:00

 

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(a.ik)

 

ルドン展 見逃せない作品!【後篇】

2013/08/17

8月25日(日)までの会期となる

「オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから」は全国4会場を回る巡回展です。

当館は東京の損保ジャパン東郷青児美術館さんに続く、2会場目の会場です。

見逃せない作品【後篇】は、静岡展で展示が終了してしまう2点と、

静岡展と岐阜展にしか出品されない1点の油彩作品をご紹介します。

ギャラリートークでは、時間の都合もあり、なかなかご紹介出来なかった作品たちです。

 

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オディロン・ルドン≪アレゴリー―太陽によって赤く染め得られたのではない赤い木≫1905 年 油彩、画布 三重県立美術館

 

≪アレゴリー≫または≪太陽によって赤く染められたのではない赤い木≫と呼ばれている作品です。

右側の真っ赤な木の前に、腰布を巻いた裸の男性と、その傍らにははっきりとはしませんが

ヴェールを被った女性らしき人物が描かれています。

印象的な赤い木は、晩年のルドンの作品にしばしば出てくるモチーフで、

今回の展覧会チラシのメインイメージにもなっている≪神秘的な対話≫(1896年頃、岐阜県美術館蔵)でも、

女性が赤い枝を手にしています。

 

主題もタイトルのアレゴリーも何かははっきりとはしないですが、右側の男性をよく見ると...

大きな貝の上に立っています。

貝殻の上に人物が立っている人物、といえば、皆さんもご存知の

ボッティチェッリの≪ヴィーナスの誕生≫がすぐに思い浮かびます。

けれど、この人物をウェヌス(ヴィーナス)と見るには、

あまりにも男性的なプロポーションですし、ホタテガイではなく何故かムール貝のような形をした貝...。

ルドンには、ウェヌスの誕生を題材にした作品や、貝殻だけ写生した他の作品もあります。

お気に入りのモチーフを繰り返すルドンですが、他の作品と比較してみるのも面白いかもしれません。

 

 

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オディロン・ルドン≪ペガサスに乗るミューズ≫1907年-10年頃 油彩、画布 群馬県立近代美術館

 

お気に入りのモチーフを繰り返すルドンが、「色」の世界で数多く描いたのが、

ギリシャ神話に登場するアポロン。

ルドン晩年のヒット作ということでもありますが、

本展ではそのアポロンシリーズを3点並べて展示しています。

特にボルドー美術館の作品は油彩とパステルの混合技法で描かれた、

サイズも大きくて見応えのある作品です。

 

この≪ペガサスに乗るミューズ≫は、ルドンがアポロンのシリーズを

描いていたのと同じ時期に描かれた作品です。

ミューズとは、ギリシャ神話の女神のことですが、

研究者のなかには、この描かれた人物をアウロラではないかとする人もいます。

アウロラはアポロンの姉妹で、夜の間に天空を駆け、昼を導く「曙」の神と言われています。

アポロンも太陽神ですが、ルドンはこの光を司る2人を扱いながら、

どこまでも飛躍するイメージを作り出しています。

 

そして、周りに広がるピンクや紫色の空と雲、

右側の花や植物を思わせる筆跡など、印刷物や写真ではなかなか再現できません。

ルドンの作品は、どれも印刷で再現するのは難しい微妙なニュアンスがあるのですが、

だからこそ!是非本物の作品に出会いに来てください。

「色」の世界の作品は、絵と対峙すると本当に色々なことに気づかされます。

 

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オディロン・ルドン≪若き日の仏陀≫1905年 油彩、画布 京都国立近代美術館

 

そして最後の見逃せない作品は京都国立近代美術館所蔵の≪若き日の仏陀≫。

実はこの作品、日本画家の土田麦僊(1887-1936)が、パリに滞在した際、

現地で購入し日本に持ち帰った作品です。

今回出品されている大原美術館の≪鐘楼守≫と同時期に日本に入った最初のルドン作品です。

ルドンは仏陀を主題にした作品を8点ほど制作しているのですが、

仏教だけでなく、オルフェウス教、ピタゴラス教などに共通する輪廻転生の思想は、当時の西洋人を魅了しました。

 

穏やかな雰囲気の本作、周りには≪眼をとじて≫や≪オフィーリア≫など、

眼をつぶる人物が描かれた作品が並び、展示室に静かな空気が流れています。

 

どの作品も国内の美術館に所蔵されている作品ですが、

他の作品と一緒にご鑑賞頂ける貴重な機会です!どうぞお見逃しなく!


(a.i.)

ルドン展 見逃せない作品!【前篇】

2013/08/16

6月29日から始まった「オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから」も

会期残すところ、あと8日。

 

会期中は、本展監修者の山本敦子先生や多摩美術大学教授の本江邦夫先生の講演会をはじめ、

閉館後にワインと展覧会を楽しむ特別鑑賞会、ルドンと同時代の音楽をピアノで楽しむ「ミュージアム・サロン・コンサート」、

ギャラリートークなど、さまざまなイベントが行われました。

そして、ルドンも使っていたパステルで絵を描くプログラム

「しずびオープンアトリエ ルドンの"色"とあそぼう!」も、いよいよ今週末18日までとなります。

 

 

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残りわずかの会期ですが、ルドン展のこれだけは見逃せない!

という作品をご紹介したいと思います。

 

今回の展覧会はルドンが生まれたフランス、ボルドーにある、

ボルドー美術館から約40点が出品されています。

ボルドー美術館は、ルドンの青年期の作品をはじめ、

画家のルーツを辿ることができるような重要な作品を所蔵しています。

 

ルドンは39歳の時、版画集『夢のなかで』を制作し、実質的な画家としてデビューします。

皆さんお馴染の、にやりと笑う10本足の蜘蛛や、目玉のついた気球、

人間の顔がついた花など、黒一色の怪奇で幻想的な世界を展開するのですが、

50歳をすぎると油絵やパステルを使った色の世界へと変貌します。

この≪神秘的な騎士、あるいはオイディプスとスフィンクス≫は、

ルドンが「黒」から「色彩」へと移行する時期に描かれた作品です。

 

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オディロン・ルドン≪神秘的な騎士、あるいはオイディプスとスフィンクス≫1892年頃 木炭、パステルで加筆、画布で裏打ちした紙 ボルドー美術館

 

神殿のような背景や描かれた人物から、ルドンが影響を受けた画家の一人

ギュスターヴ・モローの≪オイディプスとスフィンクス≫や≪オルフェウスの首をもつトラキアの乙女≫を思わせます。

けれどこの作品は、2つの神話の要素が入り混じっていたり、細部まで描いていなかったり...

と曖昧な部分が多いです。ルドンにとっては、神話や宗教の物語を正確に描くことよりも、

自らの内面のイメージを描くことが大事だったのかもしれません。

 

また、この作品は黒の時代に多用していた木炭で描いた上に、パステルで加筆されています。

白のハッチングや、青の光るような深い色彩は、実際の作品を前にしてこそわかる美しさです。

謎めいた主題、描ききらない曖昧さ、禁欲的な色彩など、決して派手さはないですが、

観るものに様々なことを想起させる、まさに象徴性を感じさせる一枚です。

この作品は神秘主義的な美術雑誌『心(ル・クール)』で大体的に紹介され、

評判を呼んだ作品としても知られています。

ちなみに、ルドンはこの時期、神秘主義者たちが集まるオカルトちっくな書店で個展も開いていたりもします。

 


そして、会場の最後に飾られているこの作品。

 

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オディロン・ルドン≪聖母≫1916年 油彩、画布 ボルドー美術館(オルセー美術館からの委託)

 

ルドンは1916年76歳で亡くなりますが、

亡くなった時にアトリエのイーゼルに載せられていたのがこの作品でした。

時代は第一次世界大戦の真只中、ルドン最愛の息子アリは前線にいて、父親の最期には間に合いませんでした。

祈るような聖母の姿は、アリのために描かれたようです。

ボルドー美術館には、そのアリが保管していたコレクションが寄託されています。

本作は未完の作品ですが、このような作品に出会えるもの、本展だからこそ。

 

どうぞお見逃しなく!

 

(a.i.)

「オディロン・ルドン 夢の起源」展、1万人達成!

2013/08/14

昨日8月13日、「オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから」の観覧者が1万人を達成しました!


1万人目のお客様は、市内中学校に通う中学生たち。夏休みの宿題で、展覧会を観に来てくれました。

 

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当館学芸課長より記念品を贈呈しました。
記念品の中には、ルドン展の図録も。宿題の参考にしてくださいね!

 

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顔出しパネルを使って、記念撮影。

 

この後、じっくり展覧会をご覧いただきました。ありがとうございます。

 

 

「オディロン・ルドン 夢の起源」展は、8月25日(日)まで開催!
みなさま、ぜひご来館ください。

 

 

 

展覧会「オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから」
会期:6月29日(土)~8月25日(日)
休館日:月曜日 
観覧料:一般1100(900)円、大高生・70歳以上700(500)円、中学生以下無料
*(  )内は当日に限り20名以上の団体料金

 

(c.o)

 

しずびオープンアトリエ「ルドンの"色"とあそぼう!」毎日開催中です!

2013/08/07

暑い日が続きますが、皆さま体調などくずされておりませんでしょうか??

 

さて、ただ今静岡市美術館では、この季節恒例「しずびオープンアトリエ」を開催中です!

所要時間1時間、参加料200円、予約不要という、気軽に参加できるこのプログラム。
今年の夏は「オディロン・ルドン 夢の起源 幻想のふるさと、ボルドーから」展にあわせて、

フランス・ボルドー生まれの画家ルドンも使った、"パステル"を使って絵を描く内容になっております。

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みなさん、パステルという画材をご存じですか?
パステルは、粉状の顔料を粘着剤で棒状に固めたもの。
顔料がそのまま紙にのるから、発色がとてもきれいです。

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では、プログラムの様子をご紹介していきます。

まずはこちらの絵をご覧ください。

 


これは、ルドンが17歳の頃に知り合った、アルマン・クラヴォーという植物学者が描いた

《植物学素描1 標本画5 裸子植物》

《植物学素描1 標本画30 藻類》です。

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顕微鏡からみた裸子植物、藻類。よく見ると、本当におもしろい形がいっぱいです。

ルドンも、"肉眼ではみえない未知の世界"に大きな影響を受けたそうです。

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今回のプログラムでは、この裸子植物や藻類を

夢の中の「生き物」に見立ててパステルで色付け、そして最後に"眼"を入れて仕上げていきます!

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9種類の「生き物」から1つを選んだら...

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まずは、背景から色付け!ソフトパステルから同系色3色を塗り重ねていきます。
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次に生き物。背景で選んだ色とは反対色の"補色"から選択します。ここで役にたつのが色相環!

背景が黄色だったら、生き物は青になりますね。

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次の工程では、「生き物」を立体的にしていきます。

細かい線を重ねるのに向いているハードパステルで描いていきます。

蛍光色のハードパステルも用意しています。

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線を同じ方向、網掛け、長いストロークなど、いろいろ工夫しながら引くことで...


こんなに、生き物が活き活きと見えてきました!
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さあ、ここから仕上げに向かっていきます。
生き物をより強調するために、背景を塗っていきます。


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最後のキモが、"眼"入れ!!


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完成した「生き物」たちがこちら!!

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「前回のオープンアトリエが楽しくって!」と今回も参加して下さった方々や、

パステルは初めてだったけど、丁寧に教えてくれてすごくわかりやすかったとの声も!


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しずびオープンアトリエは、8月18日まで、毎日開催しています!
小学生以上であればどなたでも、もちろん大人の方も大歓迎ですよ。

ぜひご参加をお待ちしております!!
(s.m)