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東西七夕美人対決 深水VS恒富 そして雪岱

2012/08/05

 

 ただ今、後期展示の七夕の美術展展示室では、東西の近代美人画家による七夕対決!

 東は、日本近代を代表する美人画家・伊東深水《銀河祭り》(左側)

 西は、近年注目される大阪の美人画家・北野恒富《願いの糸》(右側)


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本展を準備する中で、また実際作品を展示していて、改めて、近代を代表する日本画家たちにとって七夕という画題が大切なものだったんだということを感じます。
 (その理由は、まだ私にはわからないけれど、、、)


 しかも、私たちが今では忘れている七夕の風習が描かれることが多いこと!

 二人が描いた七夕の風習とは、、、、

 旧暦の七月七日(本年は八月二十四日にあたります)、女性たちは盥(たらい)の水に"天の川"を映し、その上で針に糸を通すことで、裁縫の上達を祈ったといわれています。これは、冷泉家に今なお伝えられる乞巧奠(きっこうでん)と呼ばれる技芸の上達を祈る星祭りの風習にもよります。


 左側の伊東深水《銀河祭り》と右側の北野恒富《願いの糸》

 いずれも、この、私たちが忘れている七夕を描いた、とっても魅力的な作品です。

 

 まず、左側の作品、深水からみてみましょう。
 薄い青の着物を着た女性が、水がなみなみと張られた盥の前にしゃがんでいます。彼女は一心に針に糸を通そうとしています。その真剣な表情、真っ白い肌に赤い糸が印象的です。
 頭上には笹の葉に短冊、そして「梶の葉」が象徴的に吊り下げられています。
 そして短冊には「七草や 露の盛りを 星の花」と鬼貫の"秋の句"が認められているのです。
 この作品は一九三八年頃から構想を練り、第二回日展へ出品した彼の渾身の大作!


 一点の破たんもなく研ぎ澄まされた美しさを感じます。

 深水の師・鏑木清方に、ローマで開催された日本美術展へ出品した《七夕》絹本着色 六曲一双 昭和四年(一九二九)大倉集古館蔵がありますが、深水はいわばそのエッセンスをこの堂々たる大幅に描ききっているといえるでしょう。

 

 右の作品、恒富も負けてはいません

 女性の、物思う、なんともいえない表情は、深水の一途それとは違った味わいがあります。

 髪飾りにも☆がきらめいています。何より、当時評判となったといわれる「恒富の赤」が画面を引き締め、効果的ですね

 

 さらにさらに、

 本展では、もう一点、この風習を描いた、とても素敵な作品を展示しています。

 ちゃんと、盥の水に映った星を描いた作品、小村雪岱《星祭り》です。

 

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小村雪岱《星祭り》金子國義氏蔵

 

 大きな盥の前にしゃがみこむ華奢な美人。彼女が覗き見ている盥桶の中には、まるで蛍の放つ光りのような青っぽい星が五つぶみえるのです。
 彼女の着物には秋の草花である桔梗と薄が描かれています。群青色の桔梗の花はお星様の形と同じ、五角形!薄の曲線は流水紋にもみえ、まるで天の川の衣をまとっているようにもみえますね。


 (ちなみに、この見方は、お客様に教えて頂きました。あの泉鏡花の装丁本などを手掛けた雪岱ですから、着物に描いた桔梗は、秋だけじゃなくて☆を、天の川を意識していたかもしれませね)

 

 

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 初秋の星祭り・七夕は、今も昔も私たちにとって魅力的な行事であることを、こうした作品群は何より雄弁に物語ってくれている、そんなことを考えます。

 この展覧会は残すところあと2週間!今、ここでしか見られません!

 ぜひぜひ静岡市美術館へご来館ください。

 

(e.y.)